エスカレーターで歩く、または走る行為は、なぜ危険を伴うのかを詳しくまとめました。
多くの地方自治体が「エスカレーターでの歩行禁止」を法令で定め、メーカーもリスクを啓発するために特設サイトを設けています。
エスカレーターの片側を空ける行為の危険性
エスカレーターメーカーの日立ビルシステムは2024年5月20日に、エスカレーターの歩行に伴うリスクに焦点を当てた特設サイトを開設しました。
日立ビルシステム:エスカレーターを歩行することの危険性について
このようにメーカーが直接リスクについて啓発するのは非常に珍しい取り組みです。
かつてエスカレーターの片側を空けることはマナーとされていましたが、今では鉄道会社などが「両側の手すりを握り、立ち止まって乗る」ことを推奨しています。
これは、片側を空けて急ぐ利用方法が、実際には多くの危険を伴うことが認識されたためです。
例えば、さいたま市は2021年、名古屋市は2023年にエスカレーターの安全利用を法令で義務付けました。
さいたま市では「右側の手すりを利用する人もいるため、片側を空けると転倒事故につながるリスクがある」と説明しています。
メーカーによる具体的な啓発活動
日立ビルシステムの特設サイトでは、エスカレーターの歩行によるリスクを具体的なデータで示しています。
たとえば、エスカレーターの踏段は通常の階段よりも高く、通路の幅は日本人男性の平均肩幅を満たしていないなどが挙げられます。
これまでエスカレーターは歩行を想定して設計されていませんでしたが、エスカレーターの歩行が社会問題として認識されるようになった現在、メーカーは積極的にこの問題に取り組むことを決め、具体的な情報を提供しています。
エスカレーターでの事故、その増加傾向について
エスカレーターでの事故は残念ながら年々増加しているようですね。
日本エレベーター安全協会が集めたデータによると、2018年から2019年にかけて報告されたエスカレーター事故は1,550件にも上り、これは15年前の674件から見るとずいぶんと増えています。
最近発生した大きな事故について
2024年3月26日には、茨城県のJR水戸駅で衣服がエスカレーターに巻き込まれるという大変な事故が起こりました。
また、2023年6月8日には韓国でエスカレーターが逆走してしまい、14人が負傷する事故がありましたね。
日本国内でも、過去には東京国際展示場や武蔵小杉駅でエスカレーターの逆走事故があり、多くの人が怪我をしました。
エスカレーターで歩くことのリスク
地方自治体や事業者が安全啓発活動を行っているにも関わらず、エスカレーターで歩くことがなぜ危険か、その理由を詳しくお話しします。
踏段の高さが引き起こすつまずきリスク
エスカレーターは歩くことを主目的に設計されていないため、一般的な階段と比較して踏段の高さが異なります。
このため、つまずきやすくなっており、小さなつまずきが大きなトラブルに発展することもありますよ。
狭いステップ幅とその危険性
エスカレーターのステップの幅はだいたい100cmですが、これは日本人男性の平均的な肩幅44cmよりも狭いです。
特に冬場には服が厚くなるため、さらに狭く感じます。この狭さが原因で、後ろから来る人が前の人や荷物に接触し、転倒や落下事故を引き起こすリスクが増えます。
エスカレーターは多くの人に利用される便利な設備ですが、特に高齢者や子ども、障がいを持つ人と一緒に利用する時は、互いに気をつけて安全に使いたいですね。
エスカレーターの可動部分とその危険性
エスカレーターは正しく使えば安全な移動手段ですが、歩いてバランスを崩すと予想外の事故につながることがあります。
特に、ステップの隙間や降り場で靴ひもや衣服が挟まると、大きなトラブルに発展する恐れがありますから、注意が必要です。
靴ひもほどけてることに気づかずにエスカレーター乗ったら、降りるとき靴ひも巻き込まれて焦った。
もうエスカレーター恐怖症です✋#残骸 pic.twitter.com/0aucEby4t3
— o (@mtmo60) May 12, 2018
エスカレーターの急停止とそのリスク
エスカレーターには異常を感知して自動的に停止する安全装置がついています。
この装置が作動すると突然エスカレーターが止まり、利用者が転倒してしまうことがあります。
今日は変な日。今、帰り道。心斎橋の地下鉄で上に行くエスカレーターに乗ってすぐに急ブレーキみたいにガクッと急停止。みんな自力で上がってた。何か気味悪いわ、気をつけて帰ろう…
— ゆぷ (@yupichan5599) May 15, 2024
特に停電などで急に止まると、さらに危険です。だから、いつも手すりをしっかり握ることが大切です。
エスカレーターの安全な利用方法
関東と関西ではエスカレーターの使い方に地域差がありますが、基本的にはエスカレーターで立ち止まって利用するのが適切です。
エスカレーターは静止している状態での利用を前提に設計されており、歩くことによる振動や負担が機器の故障や早期の摩耗を招く原因になるのです。
片側を空ける習慣のリスク
エスカレーターで片側を空ける習慣は、一部の人にとっては危険を伴います。
特に、特定の手すりのみを使うことができる人がいる場合、その空いた側でバランスを崩しやすくなります。
また、エスカレーターを急ぎ足で上がったり下りたりすることは、自分だけでなく他の利用者をも危険にさらす行動となるため、ゆっくりと安全に乗ることを心がけましょう。
エスカレーターを使う時の安全な三つのポイント
エスカレーターを使う際には、
- 「手すりをしっかり握る」
- 「じっと静止する」
- 「2列に整然と並ぶ」
ことが大切です。これらのシンプルなルールを守ることで、エスカレーターの安全性はぐんと高まりますよ。
2列で乗ることのメリット
構造計画研究所の行ったシミュレーションによると、片側を空けるよりも2列で乗るほうが、より多くの人をスムーズかつ効率的に運べるそうです。
エスカレーターの待ち時間を減らし、利用者の流れをスムーズにするためにも、2列での乗り方がおすすめです。
まとめ、エスカレーターでは歩かないようにしよう
一般的にエスカレーターでの歩行は推奨されていません。
特に片側を空けての利用は、予想外のリスクを伴います。エスカレーターメーカーも、事故が増えている現状を受けて、利用者の安全を確保するために積極的な啓発活動を行っています。
エスカレーターを利用する際は、安全第一で、手すりをしっかり握り、静かに乗ることを心がけましょう。